日本のハイブリッドカーの歴史、いや、世界のハイブリッドカーの歴史は、1997年に発売されたトヨタ・プリウスから始まった、と断言しても過言ではありません。それまでもハイブリッドカーは散発的に発売されましたが、実験車的性格を帯びていたり、高価だったりで、普及には至りませんでした。

アイシンAW製のハイブリッド・システムです。
レクサスGS450hに搭載されています。発電用と駆動用の電気モーターを搭載した後輪駆動ハイブリッド車専用のトランスミッションです。

 ところが、プリウスはエンジンとモーターの動力を状況に応じて使い分ける効率の高いシステムを搭載していただけでなく、大人4人と荷物を飲み込むスペースを新しい概念のパッケージで包み込んだことが特徴でした。ハイブリッドシステムが持つ「燃費の良さ」や「先進性」、それに完成度の高さから、プリウスは市民権を得るに至ったのです。

 1999年には、ホンダがインサイトを発売。「燃費向上」に割り切った設計コンセプトを採用し、徹底した軽量化や空力性能を追求。2名乗車に割り切ったのも、効率追求のためです。実用性重視のプリウスと、燃費重視のインサイト。ハイブリッドシステムが持つアプリケーションの多様性は、この時期に早くも提示されていたのです。2000年には日産が100台限定でミニバン形態のティーノ・ハイブリッドを発売しています。

 21世紀に入ると、トヨタのハイブリッド戦略が加速します。2001年にミニバンのエスティマ・ハイブリッドをデビューさせると、同年にクラウンとアルファードにハイブリッドを追加。2003年にはプリウスが2代目に進化し、システムの効率だけでなく、走行フィーリングに一段と磨きを掛けました。2005年にはSUV(スポーツ多目的車)のハリアー/クルーガーにハイブリッドが追加。2006年にはトヨタの高級車ブランド、「レクサス」初のハイブリッド車となるGS450h(右上図)が登場。2007年には旗艦モデルであるLS600hが登場し、ハイブリッドカーのフルラインアップ化が完成します。

 環境に対する感度の高さを示すツールとして、世界のセレブが2代目プリウスを購入する現象が話題となりました。環境意識の高まりとともに2代目プリウスはセールスを伸ばし、2008年には世界累計販売台数100万台を突破。トヨタは2010年代の早い時期に、年間100万台の販売を実現するという意欲的な目標を掲げています。

 一方、ホンダは2001年に中核モデルのシビックにハイブリッドシステムを搭載した、シビック・ハイブリッドを発売。2005年にモデルチェンジし、実用性を高める方向に開発の方向性をシフトしました。

インサイトの表示パネルです。左のメーターは、アシスト側(上)に針が振れているときはモーターが駆動して、チャージ側(下)に振れているときは、ブレーキのエネルギーをバッテリーに充電していることを表しています。

 ホンダは2009年2月、新型インサイトを発表・発売しました。1999年に発売した初代インサイトは、「世界ナンバーワンの燃費性能」を目標に開発されました。実用面を割り切った先鋭的なモデルだったのです。

 一方、新型インサイトは、「世の中に役立つ技術は、誰もが手にできてこそ意味がある」という考えのもと、デザイン、走り、空間、使い勝手など、トータルバランスに優れたクルマを目指しているのが特徴です。全国メーカー希望小売価格が「189万円から」という、求めやすい価格にホンダの意気込みが表れています。「燃費のいいハイブリッドカーは魅力的だけど、ガソリン車との価格差がちょっと……」と、尻込みしていたユーザーを振り向かせるに足る戦略的な価格設定です。

インサイトのハイブリッド・システム。一番下にある筒状のものがニッケル水素バッテリー(サンヨー製)です。その上に載るのがバッテリーやモーターを制御する各種コンピューターです。

 低価格実現のカギを握るのは、コスト低減への徹底した取り組みです。ハイブリッドシステムを構成するモーターやバッテリーなどの部品点数を削減したのに加え、製造能力の向上を図りました。年間目標台数である20万台を生産するため、モーターやバッテリーの組み立てラインを鈴鹿製作所(三重県)に新設。自動化を積極的に採り入れることで製造スピードを高め、コスト低減に結びつけています。モーター/ジェネレーター(発電機)やバッテリー、パワーコントロールユニット(電力のやりとりを制御する装置)などの各ユニットはコスト低減と同時に小型軽量化を実現していますが、これはサプライヤーの開発能力の高さを物語っています。

レクサス450h用のハーネス(電線)です。電池やモーター、インバーターだけでなく、ハーネスもハイブリッド車用に開発しなくてはなりません。
これはデュポン製ですが、住友電工や矢崎総業などもこの分野のメインプレーヤーです。

 トヨタ・プリウスは3代目への進化が控えています。インサイトが燃費最優先から価格重視へと路線を大きく変更したのに対し、プリウスは好評だった燃費性能にさらに磨きを掛けて登場します。日米欧の3大マーケットでさらなる拡販を目指すモデルだけに、燃費性能に直結するハイブリッドシステムの開発にはとくに力を入れ、モーター/ジェネレーターやバッテリー、パワーコントロールユニットの主要コンポーネントは、大きく進化させています。

 日産は2000年のティーノ・ハイブリッド以来、ハイブリッドからしばらく距離を置いていましたが、2010年度に北米と日本市場に日産独自のシステムを搭載したハイブリッド車を投入する予定だと発表しています。