ニッケル水素電池

プリウスやインサイトに使われているニッケル水素電池。一般的な鉛電池と比較すると1.7倍の性能があります。正極にはオキシ水酸化ニッケル、負極には水素吸蔵合金が使われることが多いです。

 ハイブリッドカーをはじめとするモーター駆動車(代表的なのは電気自動車)の進化の歴史は、バッテリーの進化の歴史だと言っても過言ではありません。もともとハイブリッドカーは、電気自動車(バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動し、走行するクルマ)の航続距離の短さを克服するために生まれた背景があります。電気自動車は、走行段階でガソリンや軽油などの化石燃料を使用せず、排出ガスをゼロにする究極の環境対応車として、1970年代に2度訪れたオイルショックを機に脚光を浴びました。

 電気自動車の普及を阻んだのは、バッテリー性能の低さでした。当時のバッテリーは主に鉛電池でしたが、これはエネルギー密度(単位あたりの容積に蓄えられるエネルギー量)が低く、大きなバッテリーを搭載してもほんのわずかな距離しか走行することができなかったのです。そこで、航続距離を伸ばす手段として開発されたのが、ハイブリッドカー(シリーズ方式:別項参照)でした。エンジンで発電機を回して電力を発生させ、搭載したバッテリーに供給します。そうすれば、搭載するバッテリーがもともと蓄えていたエネルギー分よりも長い距離を走行することができるのです。

 電気自動車から発展した初期のハイブリッドカーが、モーターを「主」、エンジンを「従」としてシステムを構成していたのに対し、エンジンを「主」、モーターを「従」としてシステムを構成したのが、1997年に登場したトヨタ・プリウスでした。電気自動車の航続距離を延長するのではなく、ガソリンエンジンの欠点を補うという発想で生まれたハイブリッドカーで、現在のハイブリッドカーの多くがこの思想で設計されています。モーターはアシスト役に徹するため、バッテリーの容量はそれほど多く必要とはしません。とはいえ、従来の鉛電池をそのまま使っていたら、居住空間や荷室スペースを占拠するほど巨大なサイズになっていたでしょう。

 ところがプリウスは、鉛電池に比べて1.7倍程度のエネルギー密度を持つニッケル水素電池を搭載。スーツケース大のサイズに抑えることで、居住空間や荷室スペースを犠牲にすることなく、バッテリーを搭載しています。このニッケル水素電池が、現在のハイブリッドカー用バッテリーの主流です。

リチウムイオン電池

次の世代のバッテリーの本命がこのリチウムイオン電池です。ハイブリッド車や電気自動車でもっとも重要な要素と言えるでしょう。負極にはカーボン(炭素)が使われますが、正極の素材開発競争は激しく、コバルト、マンガン、鉄などの化合物が研究開発されています。

 ニッケル水素電池の次の世代は、リチウムイオン電池(右図)です。リチウムイオン電池は鉛電池との比較で3倍を超えるエネルギー密度を誇ります。つまり、同じ性能なら3分の1の体積で済むので、大幅な小型化が可能。逆に、サイズをそのまま維持すれば、大量のエネルギーを蓄えることができるので、ハイブリッドカー向けの用途だけでなく、プラグイン・ハイブリッドカー(外部充電により一定距離をモーターのみで走行可能なハイブリッドカー)や電気自動車向けの用途が現実味を帯びてきます。

 リチウムイオン電池は携帯電話やパソコンなど、すでに身の回りの製品に使用されていますが、ハイブリッドカーなどのモーター駆動車に搭載するには、クリアすべきハードルがいくつかあります。クルマで使用する場合は走行状況に応じてランダムに充放電を繰り返しますが、リチウムイオン電池の場合、充放電のマネージメントが難しいのです。また、過充電・過放電に弱いのに加え、低温特性が良くないといった課題も抱えています。ニッケル水素電池に比べてコスト高な点も課題です。未完成な要素が数多くあるということはそれだけ、伸び代の大きな開発領域だと言えるでしょう。