海の向こうはこんな暮らし

ドイツにユーロ硬貨が導入されたのは約6年前の2002年1月1日。その日はまず近くの銀行へ行って、ユーロ紙幣をおろし、家から準備してきた新しい財布に詰め込みました。古い財布には、まだ交換し切れてないドイツ・マルクの小さな小銭がじゃりじゃり入っているので、別々の財布にキチンと分けておかないと、取り出すときに困るからです。
とても寒かったその日、私は頭からつま先までありったけの衣類を身に着けて、青空市場がある広場へ向かいました。売り場のサラダ菜が凍るほど寒い日でも、市場が開かれる水曜日と土曜日にはいつもたくさんのブースが軒を連ね、食品、洋服、アクセサリーとさまざまな商品がならび、活気にあふれています。

(上)5ユーロ紙幣(約810円相当)。(下)地方の農家が市場に店を出している。
市場を訪れるたびにいつも尊敬してしまうのは、量り売りがメインの八百屋さんの暗算力。いろいろな品物を次々とグラムやキロの単位で注文すると、ブツブツと暗算しながら袋にどんどん詰めてくれます。途中仕事仲間に話しかけられても、暗算の数字を忘れることはなく、正しく(?)合計金額を出してくれます。そんな暗算得意の八百屋さんも、ユー ロ導入初日の今日はてんてこ舞いしているに違いない、などと思いながらお買い物に行きました。
ところが、ユーロもマルクも同時に使われているにもかかわらず、店の売り子さんは何のことはないといった顔をして、さっさとお勘定しているではありませんか。さすが長年の経験はたいしたものです。当時は1ユーロ=約2マルクだったので、本当ならば商品の価格の数字が2分の1になるはずなのに、価格が低い商品はそのままで売られていました。 つまり、1玉1.5マルクだったレタスは、1.5ユーロで売られていたわけです! これでは物価が2倍になったのと同じです。ですが、給料が倍になったという話はまだ耳にしたことがありません。がぜん市民の生活は少し厳しいものになってしまいました。

市場のお花屋さん。ブーケも作ってくれる
ドイツ語では、2ケタの数字の数え方が逆になります。たとえば、「35」は「5と30」となり、常に1ケタ目の数字から読みます。この複雑な数字の読み方と関係があるのか、お店の人が暗算しておつりを払うとき
も、必ず足し算を使って小銭を出します。たとえば、75ユーロの商品を買うのに、お客さんが100ユーロ札を出すと、キャッシャーのお姉さんは、まず5ユーロ札を渡しながら「80ユーロ」と言い、残りの10ユーロ札を1枚、2枚と出すたびに、「90ユーロ、100ユーロ」と言って、最後は私が出した金額である100になるように足し算をしながらおつりをくれるのです。

安価で海外に電話できるようになっているネットカフェ。欧州に多いタイプのカフェだ。携帯電話機も買うことができる
ユーロ導入によって物価が上昇したドイツ。ベルリンは首都であることもあり、他の地域と比べて、かなりの勢いでものの値段は上がりました。なかでもドイツの国家財政の状況が厳しいこともあって、地下鉄のマンスリー・カードや、大学の教育費、公共のプール代など、公共系のものの値段が数年の間に3割から5割以上も上がっています。
そんななかでどんどん安くなっているものがあります。代表的なのが電話代です。ドイツではいくつもの会社が電話代の安い電話番号を提供しており、利用者は登録などの手続きは不要で、かける番号の前に格安になる局番をプッシュするだけ、といった簡単なしくみになっています。かける場所や時間帯、あるいは相手が携帯電話なのか、普通の固定電話なのかによって、どの番号の提供会社が安いのかが違ってきます。したがって、そうした各社のランキングを調べることができるサイトで、利用者は電話をかける前に現時点での安い番号を調べる必要があります。10年前になら20分で5,000円もかかっていた日本への電話代も、いまやたったの40セント(約40円)しかかからないのです。
※上記の記事は、とくに記述がない限り、2007年11月18日現在のデータをもとに作成したものです。
在ドイツ・ベルリン12年目に突入。いままでのドイツのイメージ「ビール、皮の短パン」とまったく違う、マルチカルチャーなベルリンの生活、文化、貿易に関する情報を伝えるライターとして活躍。そのほか翻訳、通訳暦も長い。