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海の向こうはこんな暮らし

インド・デリー編 “AC charge 25%UP(エアコン料金は25%加算)!?”

日中、50度近くまで上がるインド、デリーの夏。タクシーをつかまえてドアを開けると、車内からムア〜ッとした空気が漂ってきます。黒のボディーのタクシーは、強い日差しで十二分に暖められて、まるでサウナのようです。運転手は、行き先を聞くよりもまず最初に「AC(エアーコンディショナー、以下「エアコン」)使う?」と、聞いてきます。そりゃあ、こんな暑いなか、何分も閉じ込められるかと思うと、たまったものではありません。もちろん「Yes」と即答すると、運転手は窓を閉め、エアコンのスイッチを入れ、ようやく「どこへ行きますか?」と、途端に愛想よく聞いてくる始末です。


強面のインドのタクシー運転手と黒いボディーのインド国産車アンバサダーのタクシー

運転手の愛想が急によくなる理由は、自分が乗客といっしょに、束の間の涼しい思いができるということもありますが、なんと、ここインドでは、エアコンの利用料金が別途かかり、ちょっとした収入を手にすることができるからです。デリーでは通常、運賃の25%が加算されます。ただ、25%も上乗せして支払うほど車内は冷えることもなく、どう考えても動力を利用してエアコンを働かせているだけのようです。その証拠に渋滞にはまると、エアコンの効きが悪くなります。


「A/C CHARGE 25% EXTRA」(エアコン料金25%加算)の表示

25%も上乗せして支払うほど燃料を余分に使っていないだろうに、とぶつぶつ文句を言いたくなるところですが、決まりごとは決まりごと。致し方ありません。

2002年12月に開通した、地下鉄デリーメトロの「キャッチコピー」のひとつが、「全線エアコン」。ただ涼みに地下鉄を長時間利用されるのを避けるために、切符1枚1枚に時間制限を設けているそうです。

薄れてきたローンへの抵抗

最近の若者は小切手を切ることに抵抗がありません

デリーの商店街のひとつ、カロルバーグにある家電小売店コヒル・ブロスのM・Bシンさんによると、室内エアコンの売り上げは、毎年10〜15%程度伸びているそうです。なかでも共働きの若夫婦が、少し無理をして分割払いのサービスを利用して購入するケースや、割合と豊かな生活をしている人たちが、すでに家族全員がそろうリビングに1台あるけれど、寝 室用にもう1、2台欲しいので購入するケースが増えているのが2006年からの特徴。

「武士は食わねど高楊枝」的な精神が残るインドでは、「ローンを組んでまで、豊かな生活なぞしたくはない」と、車や土地を購入するときでさえローンを組むことを忌み嫌う風潮がありました。しかし、ここ数年、インドのGDP 成長率は目を見張るものがあり、人々の消費額が年々増えるのと同時に、手数料無料の分割払いキャンペーンや、各種の審査や書類を簡易にした、インドの人々が日ごろ使い慣れている小切手を複数枚発行するだけで商品を購入できる「お手軽分割払い」というサービスなどを、金融会社が展開していたりして、若年層の間ではローンに対する抵抗が少なくなってきています。

物々交換もご近所づきあいのうち?

田舎町のマーケット。物々交換は日常茶飯事

エアコンに手が届くのは、約11億人いるといわれているインドの人々のうち、3億人程度を占める中産階級以上の人たちです。エアコンの代金は約1万5,000ルピー(1ルピー=約2.8円換算で約42,000円)くらいから。これはいわゆる中産階級にギリギリ入る人たちの1カ月分のお給料に相当します。

それでは大多数を占める庶民の暮らしはというと、下町にある商店街をのぞいてみると、たとえば、屋台で運ばれてくるマンゴー屋さんに、チャイ(インド風ミルクティ)屋さんが「マンゴー1キロ、チャイ3杯でね」などと話しかけ、交渉成立。このような物々交換が日々普通に行われています。

このような庶民の人々にとって、エアコンは高嶺の花。タクシーのエアコン料金25%加算というのも、「ぜいたく税」と思えば致し方ないのかもしれません。

「インドの魅力は?」との問いに、「マハラジャ(王様)、貧しい者。雪に囲まれている地域。夏は50度まで気温が上がる地域。山、海、砂漠があって、地球にあるものが全部ある。そう、なんでもあるのがインドだ」と、答えた方がいらっしゃいました。まさに地球のミニチュア版インドに、一度ぜひ足を運んでみてください。

※上記の記事は、とくに記述がない限り、2007年11月20日現在のデータをもとに作成したものです。


プロフィール
池田 未枝(いけだ・みえ)
フリーランスライター。インドデリーに在住。自分の足で歩いて、見聞することをモットーに、インドの文化や子どもたち、庶民の生活に根ざしたレポートを、雑誌やwebサイトなどに数多く寄稿。

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