東名高速道路プロジェクトの秘話
日本は世銀の成功モデル

有馬 新幹線などの貸出も行いました。東名高速道路も1966年に世銀から貸出を受けました。アメリカは無料のフリーウェイですが、日本は高い高速道路料金をとっていますよね? 高速道路料金を徴収するというキャッシュフローを担保に貸出を受けられたのです。
藤沢 高速道路料金をとることは貸出しのときのルールだったのですか?
有馬 日本独自のモデルで、アメリカにはなかったですね。じつはそのときの経験がいま、中国で生かされているんです。じつは東名高速道路で失敗談がありまして…。最初、日本政府から上がった案は片側3車線3車線の合計6車線でした。当時日本は世銀の案件が積み上がっていたのでこれ以上貸出できないという状態でした。日本への貸出額は総貸出額の10%以上を占めていて、ある時期には貸出額がトップになっていました。そこで世銀がその案を日本へ押し戻したんです。その結果2車線ずつになったというわけです。中国はいま、たくさん道路を作っているのですが、あまり借り入れを膨らましたくないようで、初めから2車線2車線でいいとしていました。それを世銀が押し戻して「用地買収だけはやっておいたほうがいい!」と助言したんです。それで中国は3車線3車線になりました。
藤沢 民間企業であるトヨタはどうして借りられたのですか?
![]() 青野 泰弘さん
トヨタFS証券 金融市場グループリーダー
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青野 そうですよね。それまでは火力発電や物流しか貸出していませんでしたよね。
有馬 トヨタさんは優良企業ですし、トラックを生産しているから「物流」面をより充実させるために、トヨタさんに頑張ってもらおうと当時の世銀スタッフは考えたのだと思います。昔の資料を見ると詳しく導入後のキャッシュフローが分析されていて、業績は改善して返済に懸念なしというように書かれているんです。
藤沢 当時のトヨタの社員の方に聞いてみたいですよね。世銀からお金を借りて、社内ではどういう話があったのか……。
青野 みなさん、覚えていらっしゃいますよ。先日、初めてトヨタファイナンシャルサービス証券から世銀債を発行するときになったとき、非常に喜んでいました(笑)。世銀債が販売できるようになったって。あの頃の日本は過小資本でしたから、トヨタも事業を拡大するためにお金を入れなくてはならなかったのです。でも、なかなか多額の貸出をしてくれる銀行はありませんでした。

有馬 世銀は工業だけに貸すわけではないんです。農業、環境、教育など、モノ作り以外も扱っています。愛知用水の案件も農業関連で重要な案件でした。当地では恒常的な水不足に対して溜池を作って対応していたのですが、雨が降らないと多大な被害が出てしまい、これではマズイとなったんです。そして、地域の人が農林水産省に働きかけ愛知用水公団が作られて、世銀が用水工事に貸出をすることになりました。
藤沢 日本はとても世銀にお世話になっていたんですね。どうして日本はそんなに貸出をしてもらえたのでしょうか?
有馬 日本人は勤勉ですし、お金を借りたらきっちり返す国民性が評価されたのだと思います。
藤沢 世銀のポスターに、「日本は世銀の成功モデル」と書いてありましたが…。
有馬 そうです。まさに、日本は世銀の成功モデルなのです。
